新しい自治会の運営体制に係る提言書

体制検討委員会において新しい福王台自治会のあるべき姿を検討し、得た結論をここに提言としてまとめる。
初版 2025年12月20日

1.提言書の作成に至るまでの経緯

1.1 福王台自治会の運営に係る問題の定義(何が問題となっているのか?)

1.1.1 役員の忌避

自治会を運営するにあたり役員は必須であるが、これを忌避する傾向が強まっている。
本部役員に関しては、推薦しても断られてしまい、また募集しても誰も応募しない状況がつづいている。
その結果、本部役員は少なくとも5年以上、最も長い役員で10年を超えて勤めており、業務の属人化や役員の疲弊が著しい。

分区長はどの分区も輪番制となっており、比較的安定して交代できているが、当番が回ってきたときに就任を拒否して自治会を退会する事例が発生している。

班長についても、高齢や繁忙などを理由に拒否されるか、分区長の事例と同様に退会してしまう事例も出ている。

1.1.2 退会者の増加に伴う会員数の減少

前項のとおり役員を引き受けたくないために退会する者のほか、自治会の在り方に疑問を持ち退会する者も増えてきている。
最近では、一つの班に属する会員が全員同時に退会したり、分区の半数近くが同時に退会したりする事例も発生している。

1.2 問題の分析(なぜこれらの問題が発生しているのか?)

本部においてこれらの問題について分析し、以下のような原因があると仮定した:
・役員の負担が大きい
・役員の職務内容があいまいで、何をすればよいのか分からず不安に感じている
・自治会に入らなくてもゴミステーションを利用できるため、加入の必要性を感じない

1.3 問題の解決策を検討(どのように問題を解決する?)

問題を解決するための方策を検討したが、本部だけでは手に余るものと判断した。
そこで、有志を募って解決策と新しい自治会の運営体制について検討する委員会(体制検討委員会)を発足させることとした。
有志の自治会員から構成される委員会で忌憚なく意見を出してもらい、またこれらの意見を基に新しい自治会の在り方、体制についてどうあるべきかについて議論を交わし、その結果を本部への提言として取りまとめた。

2.自治会の体制を変革するにあたっての目標

2024年11月にアンケート方式で自治会員の意識調査を行い、その結果を基に新しい自治会の体制について議論を行ってきた。
その中で様々なアイデアが出されたので、それらを整理し、以下の3つの目標を立てた。

以降の章で各目標を達成するために必要と思われる方策について提言する。

3.目標1:誰もが役員を引き受けられる体制

3.1 現状の課題

実施したアンケートの結果を見ると、事業の企画・運営を担うことについて否定的な回答が多く、自由意見では班長が担う回覧や、自治会費・寄付金の徴収が大変だったという意見も見られた。

この結果は、本部で導き出した「役員の負担が大きい」、および「役員の職務内容があいまいで、何をすればよいのか分からず不安に感じる」の2つの仮定を裏付けている。

それに加え、近年では労働年齢の上昇や、共働きにより、自治会活動のための時間を取れない世帯が増えていることも分かった。

3.2 解決策の検討

課題解決のためには、まず役員の負担を軽減することが重要と判断した。
そこで、以下の方策により役員の負担を軽減することを提案したい:

  • 自治会の運営に最低限必要と思われる事業だけを残し、その他の事業は一旦廃止
    事業の削減に伴い、役員の負担が軽減されることが期待できる。
  • 各分区、あるいは班ごとにバラバラであった役員業務を統一、かつ文書化
    各分区、班ごとに行われていた引継ぎだけでは地域差、あるいは個人差が出てしまい、混乱を招くことや、不公平感が出る。
    このような差異を無くす必要がある
  • インターネットを活用し、回覧や広報などの自治会業務を簡素化
    インターネットで回覧できれば、分区長や班長の負担軽減を期待できる。
    ※市でも電子回覧システムの導入を検討している。

3.3 組織の見直し

自治会事業の削減を前提として、自治会の組織、および運営方式を以下のように見直した:

  • 役員から事業の企画・運営に係る責務を外すため専門部と理事を廃止
  • 専門部の廃止に伴い運営委員会も廃止
  • 役員会は2回に減らし、期初と期末に実施
  • 各分区が主導して自治会を運営する
    ※分区主導の運営により本部役員の負担を軽減し、本部役員を交代しやすくする。
  • それに伴い、分区毎に独立して会計と監査を行う
  • 本部は自治会館などの共有資産の管理、総会の運営、および渉外業務を行う
  • 本部の役員構成を、会長1名、副会長1名、会計1名、および庶務2名とする
    ※従来の副会長と書記は業務の幅が広く負担が大きい。
    ※それらの業務をまとめ、庶務2名でカバーする方式にする。
  • 本部役員を輪番制など、確実に交代できる制度へ移行していく
    ※原則として分区長経験者が担うようにすれば、自治会の運営について理解があり、スムーズな運営を期待できる。
  • 本部から各分区へ給付は行わず、各分区から会員数に応じた金額を本部へ納付する
  • 本部会計は共有財産の管理、および福助会と同好会(仮)への給付を行う
    ※福助会と同好会(仮)については、「4.目標2:役員ではない自治会員との協働」を参照。

3.4 役員の改善内容

職務について改善すべき点を各役員別に挙げる。

3.4.1 班長、副班長

  • 回覧や配布物については電子化を前提とし、手間を無くす
    ※電子化された回覧や配布物を閲覧できない会員については、その費用負担を前提として戸別にポスティングするなどの対策を講じる必要がある。
  • 寄付の要請については周知のみを行い、寄付金の集金は行わない
    ※寄付金の集金を禁止にはせず、実施の是非は班長の判断に委ねる。
    ※寄付金を集金する義務を無くすことが目的。
  • 自治会費の徴収は原則として年1回4月に一括払いとする
    ※4月に退会することが分かっている場合は徴収しない。
  • 新規入会者については加入年度の自治会費を徴収しない
  • 退会者については納付済みの自治会費を返還しない
  • 副班長は「班長の補佐」との規定があるが、補佐する職務について明確にする

3.4.2 専門部理事

専門部は廃止するため、理事も廃止する。

3.4.3 分区長、副分区長

  • 回覧、配布物については電子化を前提とし、手間を無くす
    ※小中学校、警察、および神社等の全分区で共通する回覧物については、電子化する担当者を輪番制で1名選出する。
    ※分区独自の回覧は各分区で電子化する。
    ※ITの扱いに慣れている者がフォローする体制が望ましい。
    ※電子化された回覧や配布物を閲覧できない会員については、その費用負担を前提として戸別にポスティングするなどの対策を講じる必要がある。
  • 寄付の要請については、周知のみを行い寄付金の集金は行わない
    ※寄付金の集金を禁止にはせず、実施の是非は分区長の判断に委ねる。
    ※寄付金を集金する義務を無くすことが目的。
  • 分区毎の会計については現状規定が無いため、新たに分区会計を定める
  • 副分区長に会計を兼務してもらい、分区の運営について理解を深めてもらう
  • 自治会費の徴収は原則として年1回4月に一括払いとする
    ※4月に退会することが分かっている場合は徴収しない。
  • 新規入会者については加入年度の自治会費を徴収しない
  • 退会者については納付済みの自治会費を返還しない
  • 市から支給される補助金、交付金等は各分区が直接受領する
  • 本部へは分区内の会員数に応じた金額を納付する(いわゆる上納制)
    ※原則として本部から各分区への給付は行わない。

3.4.4 監事

原則として前年度の副会長と本部会計を監事として任命する。

3.4.5 顧問

原則として前年度の会長を顧問として任命する(従来通り)。

3.4.6 会計(本部)

  • 市から支給される分区宛の交付金、助成金などは本部で受領せず、各分区が直接受領
    ※本部が受領するのは自治会館に関する助成のみ。
  • 自治会費を全額受領せず、その一定割合に応じた金額を受領
  • 本部の会計は本部資産(主に自治会館や共有財産等)についてのみ行い、事業に関しては各分区ごと、福助会、および同好会(仮)で管理
    ※監査も同様。
  • 自治会館の建替費積立は停止し、残金の範囲内で修繕を行っていく
  • 将来的に輪番制へ移行し、分区長経験者から任命
    ※当番分区から分区長経験者を1名選出する。

3.4.7 書記

書記は廃止し、代わりに「庶務」を設ける。

3.4.8 副会長

  • 定員2名を1名に減らし、減らした1名を「庶務」とする
  • 会長職の補佐として、議事の進行、各組織(各分区、福助会、および子供育成会)との連絡を行う
    ※主に自治会や本部に関する業務を担う。
  • 将来的に輪番制へ移行し、分区長経験者から任命
    ※当番分区から分区長経験者を1名選出する。

3.4.9 会長

  • 自治会の代表として、主に渉外を担当
    ※自治会や本部に関することは副会長に一任してしまう。
  • 将来的に輪番制へ移行し、分区長経験者から任命
    ※当番分区から分区長経験者を1名選出する。

3.4.10 庶務(新設)

  • 自治会館の貸し出し、維持管理
  • 会議の支援
    ※会議の準備(召集の連絡、会場の準備等)と会議録 (議事録の代わりとなるもの)の作成を行う。
  • 回覧や配布物の電子化
  • 将来的に輪番制へ移行し、分区長経験者から任命
    ※2つの当番分区から分区長経験者を1名ずつ選出する。

4.目標2:役員ではない自治会員との協働

4.1 現状の課題

アンケートにより事業の企画・運営に関して否定的に考えている会員が過半数を占めていることが明らかとなった。
それに加え、従来は単年度で役員が交代してしまうため、役員任せでは知識や経験の蓄積が難しく、毎年同じような企画しか出てこないという課題がある。
またそれを補うために本部役員の負担が増えるという結果になってしまっている。
このような状況から、事業の企画・運営を役員だけに任せていては意義のある事業を行うことはできないと結論付けた。

4.2 解決策の検討

一方でアンケートでは少ないながらも事業の企画・運営に携わることについて前向きな会員がいることも明らかとなっている。
そこで、今までは役員に任せていた事業の企画・運営に誰もが参加でき、かつ継続してもらえるようにすれば、知識や経験の蓄積もできるようになり、より充実した事業の企画・運営を行えるようになるのではないか、と結論付けた。
また役員はやりたくないが、事業の企画・運営には携わってもよいと考えている会員に対して参画の機会を提供することにもつながる。

以上のことから、事業の企画・運営に前向きな会員を募り、廃止した専門部の代わりに事業の企画・運営を肩代わりしてもらう方式を提案したい。

専門部の代わりとなる組織として福助会を活用する。また、新たに同好会(仮)制度を設けて有志による事業の企画・運営が行える場を提供する。
自治会にとって最重要事業である防犯、防災、福祉、および広報の4事業については福助会に委託し、その他のレクリエーション事業については同好会(仮)に委託する。

4.3 福助会

福助会では以下の4事業を実施する:

  • 防犯事業
    昼間、または夜間のパトロールと、下校する学童の見守りを実施する。
  • 防災事業
    分区毎の自主防災組織と連携し、防災対策、および発災時の対応を検討する。
    自治会員への啓蒙ではなく、「共助」の観点で事業の企画と運営を行ってもらう。
  • 広報事業
    広報紙の作成、総会と役員会の告知、その他連絡等を行う。
    告知や連絡等の実務で庶務を支援する。
  • 福祉事業
    「はっぴい」、ラジオ体操などの健康増進事業、および外部団体が主催するイベント等への協力を行う。

4.4 同好会(仮)

レクリエーション事業に関して希望者が一定数いる場合、同好会(仮)を設立して事業の企画・運営にあたる。
同好会(仮)の設立にあたり、以下の点に留意する:

  • 濫用を防ぐために、承認や運営については複数の目でチェックできる体制が必要
    役員会において事業計画と実績に関する報告を義務付ける。
    また、自治会から補助金を支給している場合、期初においては予算報告、および期末においては決算と監査報告も義務付ける。
  • 同好会(仮)に補助金を支給する場合、総会での承認を必要とする
    自治会から補助金を支給する場合、先に本部の予算について総会の承認が必要となる。
    予算について承認が得られなかった場合は、同好会(仮)の設立を諦めるか、補助金なしで設立するかのいずれかを選択してもらう。
    浪費を防ぐため、補助金の額には必ず上限を設ける。
  • 同好会(仮)の設立にあたっては代表者1名、会計1名、監事2名の選任を義務付ける
    自治会から補助金を支給しない場合は、会計と監事は不要。
  • 同好会(仮)の優遇措置として、自治会館と備品の使用料を無料にする
    ※ただし、優先度は他の使用者と同じにする。
  • 同好会(仮)制度ができたら、現在の子供育成会を同好会(仮)として扱う

5.目標3:自治会員外の地区住民から協力を得る

5.1 現状の課題

現状、ゴミステーション周辺を清潔に保つため、ゴミ集積箱の設置、および清掃の輪番制を設けている。
ゴミステーションの維持と管理については福王台地区全体の問題であるにもかかわらず、自治会員のみが負担している状況であり、不公平と感じている自治会員も多い。

また、近年増加している自然災害に対応する際は、福王台自治会を中核として地区住民全員が連携する必要があるが、現状はそのような仕組みがない。

5.2 解決策の検討

このような状況を改善するため、「準会員」制度を提案したい。
「準会員」の概要は以下の通り:

  • ゴミステーション清掃の輪番に参加を義務付ける
  • 役員を免除する
  • 議決権は持たない
  • 自治会費については増額して収める
    ※役員の義務がないのだから、その負担を自治会費として補ってもらう。

役員を免除するとなると、多数の自治会員が準会員になることを望んでしまい、結果として役員の担い手がますます減ってしまうリスクが存在する。